Gardenia



6月の終盤、京都は降りそうで降らない空梅雨が続いています。


最近、ようやく遠くの方からクチナシが香ってきました。


数年前、5月の終わりにはあの華やかな匂いに
「もうすぐ6月」と思っていたものですが、
うちの近所では年々開花が遅くなっているのかもしれません。


その香りは、
生まれ月が6月の友人に会う日が近付いてきた、という印でした。

もう20年になる付き合いの友人、
互いの誕生月に会う以外はやりとりもしないという、なかなか淡白な交わりです。

クチナシは
その誕生祝に贈る手製詩集2冊の、印刷にとりかかる印でもあります。




クチナシといえばもう1つ思い出すこと。

初めて展覧会を開いた大学の同回生との3人展。
そのギャラリーのオーナーさんから「歌集」出品のご依頼がありました。
いくつもの絵画や彫刻が並ぶ中、
ひっそりとアンティークな卓子に置かれた1冊。
絵画畑の私の2回目の出品は、そんな経緯でなぜだか歌集でした。

その題名が『Gardenia』、クチナシです。


あの華やかな香りと厚みのある白さ。
そして「クチナシ」という意味深な名前。
声にならない声、のような、そんな印象を持って
好んで詩や歌の題材にしたものです。


英名は『Gardenia』。
その響きを知ったときに
クチナシは少し開かれた、厳かな花園のようなイメージも持つようになりました。

(学名の由来は人名のAlexander Gardenさんだそうですけれど)


香りや音と、個人的な出来事が
合わさりながら結ばれていくようなそんな感覚。


クチナシの夢のような香りに、
遠い日のことも、これから先のことも描かれているような
そんな不思議な心持ちです。



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