いわゆる「日本画」の画材を使って描いています。
鉱物を砕いた「岩絵具」、土を原料とする「土絵具」、貝殻の粉などに色を染め付けた「水干絵具」、墨、胡粉。
指や乳棒と乳鉢で膠と練り合わせ、初めて「絵具」として使えるこの材料たちは
チューブから取り出すものに比べ簡便ではありません。
それでも使う中で1つ1つ近付いていくような、そんな不思議な馴染み方をしてくれる絵具でもあります。
岩絵具は自然界にある鉱物、または人工的に作ったカラフルな原石を砕いて作られます。
その色数はおおよそ100、1つの色を粒子の細かさで10段階に分けて1000色。
メーカーごとに色味がわずかに異なるため3000色はあるのではないでしょうか。
ロットちがいや店頭に出ない非売品を考えると、圧巻の色数です。
その中で、やはり自分と仲の良い絵具というのはあるものです。
思い入れのある絵具のことを「絵具がたり」としてゆるゆる書いて参ります。
方解末(ほうかいまつ)
方解末との付き合いは長く、初めて岩絵具を使いだした学生のころから。
入学時に買いそろえるセットにはない色、白色の岩絵具です。
白色というのは少しおおざっぱで、こまかく言うと「半透明」。
その名のとおり、方解石という鉱物から得られる絵具です。
セットにはない絵具、使い始めた理由は「安いから」。
なんともはやですが、高価なものでは1両(15g)が6000円する世界において100円ほどで買える絵具は貴重でした。
美大で描く「日本画」というのはサイズが大きく、使う絵具も大量です。
当時、先生方が学生にオススメする岩絵具に「方解末」があったのも納得のことでした。
鮮やかな色と混ぜてパステル調の色も作れる、あるいは邪魔にならない「カサ増し」、下地などなど
ちょっと便利屋の立ち位置ではありますが、
私はこの方解末を「光」の色として使いました。
10代から「まぶしい光にすべてかき消える光景」が頭にあります。
「ハレーションのような」と自分では言い表していて、特に頭の右上、そこはいつもまぶしくかき消えている心持ち。
そのかき消すような光を描くのに、半透明の方解末を何度も何度も重ねました。
さすがに学生の頃のように何十両と買うことはないものの、今でも方解末は欠かせません。
岩胡粉、きざら、水晶末、色々な白の岩絵具を使いながら、
方解末を指で溶くときはやっぱりなにか特別な気持ちになる。
そんな私のとっておきの色です。