思い入れのある絵具について語る「絵具がたり」。
今回は岩絵具の混色。
白群と岩桃の2つから生まれる、淡い紫色のお話です。
白群淡口(びゃくぐんうすくち)
岩桃(いわもも)
いつも1つの絵具について話してきましたが、今回は混色。
鉱物を砕いて作る岩絵具も、色を混ぜて使うことができます。
なかでも思い入れのあるものはこの「白群淡口」と「岩桃」の組み合わせ。
ご覧の通り、こまかな水色とピンクの岩絵具です。
この2つを混ぜると淡い紫色が出来上がります。
この混色に出会ったのは大学生時分。
展覧会に行って、案内してくださった画家の方とお話していた際に。
「岩絵具のグレーは鈍い色ばかりだけれど、
こまかくて鮮やかな色同士を補色で混ぜると、きれいなグレーができますよ」
そう言って教えて頂いたのがこの淡い紫色でした。
岩絵具にはたくさんのグレー、鼠色があります。
利休鼠・銀鼠・紫鼠・桜鼠…
そのわずかな色味の違いに、多様な鼠色を楽しんだ江戸時代を思います。
ただ、もう少し鮮やかな、
鼠というよりはパステルのような明るいくすんだ色が欲しい時。
この白群と岩桃のように
相対する色と色を混ぜ合わせると、光に溶けたような美しい色が出てきます。
青色は寒々しい心持ち。
赤色はどうにもならない激しい情動。
はじけるような白い光でそれらが消え去っていく。
そんな思いを絵具に託していた頃、この淡い紫色に出会いました。
消え去る前のかそけさ。
なにかゆるやかなあわい。
色を残しながらも淡く光に溶けていく。
そんな思いにさせてくれる淡い紫色です。
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