香りの合図



ようやく金木犀が咲き始めました。
自宅近くにもあるのか、開け放った窓から入る風にその香りが運ばれてきます。


今年は夏が長く、いつもと違う時期に季節のしらせが届いています。
彼岸花・金木犀、おそらく紅葉も遅くになるか、あまり色よくないものになるのでは。



6月に書いたコラム「Gardenia」でも触れましたが、
花の香りが何かに取り掛かる合図、ということはよくあるようです。


京都で金木犀が咲き始めるのは、例年9月中旬のことでした。
10月に出品の搬入が相次ぐ画壇の公募展。
応募される方にとって、金木犀は「追い込み」の合図。
あの甘い郷愁を誘う香りに、冷や汗をかき出す人たちがいるというのが
なんともおかしいことだと思っています。


三大香木の金木犀・梔子・沈丁花。
他にも蝋梅、薔薇、フリージア、栗の花、季節ごとの香り。
桜並木の傍を通れば花はなくても「桜餅」の匂い。


今年から画家業をはじめた私にとって、それらはどんな合図になっていくのだろうか。
ふとそんなことを思います。


動き出す合図でもあり、忘れられない思い出の印にもなり、
今この時をやわらかに膨らますような香り。


草花の香りのそんな働きを感じながら、日々描いていけたらと思います。






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