絵具がたり 水干絵具・すみれ



思い入れのある絵具について語る「絵具がたり」。
今回は水干絵具・すみれ。
渋みの中に少し華やかさのある、そんな絵具のお話です。



すみれ




“山路来て何やらゆかしすみれ草”

芭蕉の有名な句にもある「すみれ」は
小さく奥ゆかしい、けれども美しい紫色を持つ花です。




その名前を冠する絵具がこちら。







ぱっと見たところは「ねずみ色」。

なんとも渋い色です。

たしかに奥ゆかしいけれど、すみれの紫のイメージとはちょっと違う。
もう少し紫が感じられても…と思う色合い。



その名前の由来は絵具を溶いてみるとわかります。





溶いてしばらく置いていると、ピンク、赤紫といった色が浮かんできます。

底から紫のグレー、青みの紫、赤みの紫、白。



詳しい製法・材料は知らないのですが
おそらく染料由来のものが入っているようで、
その上澄みは華やかなピンク色です。

ここに「すみれ」の意味が見て取れるという塩梅。


塗っている時はこうした色合い



ただ、乾くと「グレー」。
その中にかすかに赤みの紫が感じられるかな、といった絵具です。

そうしたところも奥ゆかしいと言えるのかもしれません。



この「すみれ」、学生時代に絵具屋さんに行き始めた頃からの付き合いです。

どちらかというと「重たいグレー」、
絵によっては「汚れ」のようにも見える色かもしれません。


なんとなく、名前に惹かれたのもあったのでしょう。

手に取って、その絵具の色を見て気に入って
それ以来、ずっと私の水干絵具ストックの常連です。




大学1回生の時の作品にはふんだんに使いました





9月の個展制作でもさっそく使っていますが
昔より「むずかしい絵具」だなと思いつつ。


下地の色によって
思いのほか鈍くなったり重くなったり暗くなったり。




使い慣れていくはずが、まだまだ底を見せてくれない。

なんとも奥ゆかしい絵具の「すみれ」。


もしかすると私が思うよりもずっと、美しい色を秘めているのかもしれません。











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