
思い入れのある絵具について語る「絵具がたり」。
今回は土絵具・銀黄土。
すこし緑がかったグレーは、しっとりとした月の影のよう。
そんな絵具のお話です。
銀黄土
「銀黄土」
黄土だけれども「銀」。
この名前に惹かれて最近手に取りました。
店頭では箱に入っていて色味はわかりませんが、
買わずにはいられない魅力的な名前です。
開封してみるとこうした絵の具。


かすかに黄色味が感じられるあたりに「黄土」の感があります。
すこし緑がかった色合いは
こまかな砂がしっとりと固まっているよう。
早速、月の影・淡い日の光をイメージしている作品に使っていきます。




軽やかに、でもしっとりと。
月の光が落とした影のようで、とても気に入りました。
こうしたグレイッシュな絵具には
無骨な色のものもありますが
この銀黄土は黄色・緑味がしめやかな雰囲気を、
わずかに感じる赤味があたたかさを出しています。
天然の土絵具には、そうした繊細な色のものが多くあります。
自然の中からわずかな色の違いを見つけて
それを精製して。
土絵具は、そんな営みの豊かさを感じる絵具。

絵具の名前に惹かれて、実際に使ってみてその色から着想を得る。
そんなことがよくあります。
それを思うと、この土絵具の色に「銀黄土」と名付けた人から
何かをもらっているような気がして
どこか嬉しい気持ちになる。
色の名前の中に、何かが息づいていると感じる瞬間です。
