
よく絵にする題材に「石」があります。
水の流れを描くためにスケッチに行った際、
石ころばかりの川原に目が向いたのがきっかけでした。

“小石ばかりの河原があって”と、
中原中也の『一つのメルヘン』を思い出しながら
スケッチし始めた私の中に浮かんできたのは
石に対しての「尊敬」や「羨望」でした。
人間よりも長い時を存在しながら
何も言わず、ただその場におさまっている川原の石の一つひとつに感じる、
どうしようもない羨ましさと憧れと届かなさ。
石は誠実だな、と思ったのをよく覚えています。

普段、口に出した言葉の一つひとつに
後悔や不安を覚えることはままあって
石のように何も言わず、ただそこに在れたなら
どんなに良いだろうと、そんな風に思います。
水の流れに時間を重ねて、
どうしようもなくうつろっていく人の気持ちや記憶を描いてきた私にとって
たじろがずただ時間を抱いている石は
人間が持ち得ない「純粋」な存在なのかもしれません。

そんな「石」には
古くから伝承や言い伝えや見立てがあり
その多くは「魂」に関するものです。
一方で、ただ石の姿かたちを愛でたり
より磨きをかけて一つの宝飾品にしたり
石に魅了されている方は多々。
私も美しい石の図鑑が好きで
菊花石、草入り瑪瑙、光る化石、珪化木といったものには語句からしてときめきます(笑)

それでも、
描きたくなるのは少し丸みを帯びた普通の石。
長い時を抱きながら何も語らない姿は
人にはけっして届かない純粋なもの。
見るたびに描くたびに、心を静かにさせてくれます。
