
次の個展の準備にとりかかりながら、小さな作品を作っています。
ペン画、切り貼り絵、ポストカードのデジタルペイント。
画材を変えることで、感じること・考えること・楽しみも変わってきます。
中でもペン画は「描く」といった行為でいえば
いつもの絵画作品と同じなのですが
描き始めると終わりまで一気呵成。
途中で乾きを待ったり、次の色を考えたり、という逡巡がありません。
ひたすら同じペンで同じ色を重ねていく。
濃淡も形も奥行きも、すべて「密度」だけで作られていきます。

「日本画が専門なのにペン画も」と、よく言ってもらいますが
昔から使っていた道具と言えばペン。
いまどき、なかなか「筆」から始める人は稀ですので(笑)
中学生頃から勉強に使っていた0.03mmの細いペンは
文字を書きとめるだけでなく、
何かよくわからない絵のような文様のようなものも、私の目の前に現してくれました。

あの頃はただただ同じ形を増殖させていくようなものばかり。
何も考えず、ひたすらに埋めていくその行為自体が目的でした。
それはある種、絵画の原体験。
“ 無心にただただ描く ”
私が思う「あるべき絵画」の1つの姿はそういったものです。
「美」などという考えからは遠く離れたところで起こるからこそ人を純粋に惹きつける。
世に言う「ファインアート」なるものの本当の姿は、
原始的な衝動から自然に生まれる、その色と形の中にこそあるのだと。
とは言え、色々な制約の中で
もどかしさを抱えながら描いていくこと、
積み重ねた先を目指すこともまた1つの形です。
行ったり来たりを繰り返して、
ふいに思いがけなかった美しさを見つけた時には
そのもどかしさすらどこか遠くへ行ってしまうもの。
そうした絵を描く生活の中で、
ペン画はただひたすら重ねていく歓びや「美」とは違った何かに触れさせてくれます。
もどかしさからほんの少しだけ私を解放してくれる「原初の絵画」です。
