
思い入れのある絵具について語る「絵具がたり」。
今回は土絵具・聚楽黄土。
「じゅらく」という響きからは歴史の香りが漂います。
しめやかで美しい渋さを持った、そんな絵具のお話です。
聚楽黄土
「聚楽」と聞けば、歴史に興味ある方は真っ先に「豊臣秀吉」を思い出すのではないでしょうか。
戦国時代、華々しく活躍した秀吉。
彼にまつわる遺跡は多く、数々の魅力ある築城話は現在まで語り継がれています。
そんな秀吉が京都に作った邸宅の名前が「聚楽第」。
正確な大きさ・位置は確定していませんが、現在の二条城の北、西陣一帯に、その巨大な城郭風邸宅があったのではないかと考えられています。
秀吉関連の建造物は、破壊され移築され、同時代の社寺仏閣・建造物に再活用されました。
私も社寺修復の仕事に就いていた時、いくつかそうした例に関わり、専門分野の方々のロマンと情熱を垣間見ることも。
ですので、秀吉の建造物の話はこのぐらいにしておきましょう(笑)
さて「聚楽」という言葉は、秀吉の造語ではないか、と考えられています。
「長生不老の楽(うたまい)を聚(あつ)むるものなり」
『聚楽行幸記』
意味は知らずとも、「じゅらく」という厳かで華やかな響きに、太閤さんらしさを感じるのは私だけではないように思います。
そんな「聚楽」の名を冠した土絵具「聚楽黄土」がこちら。

やわらかな土の欠片のような絵具です。
潰してみますと、

一見、地味な色の中に、少し赤みがかった黄土の華やかさが詰まっています。
溶いてみると、こうした感じ。


土絵具にはこうしたものが多く、塗ると少しザラッとした感じも。
塗りムラが出やすいもの、混ざりにくいもの。
そんな個々のクセと、自然の美しさを静かに秘めた色合いが、土絵具の魅力だと感じています。



聚楽黄土を単体で使っても美しいのですが、こうして混色に使うと、渋さと華やかさが良い塩梅に得られるなぁと思います。
古くは「聚楽第の左官に使われた」「聚楽第の跡地から得られた」、そうした由来の顔料でした。
現在は「聚楽黄土」の名のもと、その色合いに調合・製造されているようです。
豊臣秀吉が実際にどういう人物であったのか、聚楽第がどんな建物だったのか。
その100%を知ることは出来ません。
それでも、こうして手に取る絵具の「聚楽」という響き。
品よく厳かで、少し華やかなこの色が、その名前とともに愛されてきたこと。
人々の思い入れを感じる、そんな魅力の詰まった土絵具です。
