気になる・絵の経年劣化|材料の使い方





画家業を営むようになって気になってきたことの1つに、「絵の経年劣化」があります。

前職・修復業の習い性で、画材のこと、劣化のことには意識が向きがち。
そこに「販売」ということも付いて回ってくるとなると、気にしないでいるほうが難しいもので。

不要な劣化を防ぐには、画材とその使い方が大切です。




そもそも絵は「どのぐらい保てば良い」のでしょうか。


まず前提として「形あるものはいつか壊れる」というのがあります。
必衰の理、こればかりは致し方ありません。


その上で、どのぐらいの保ちを良しとするか。

作り手それぞれ考え方が分かれるところでもあります。





私は「50年」を、まず一つの目安にしたいと思っています。
本画作品、1点物、ハガキサイズ以上、1万円よりも高く販売している作品の場合はそこが目安です。


絵は、一生物であってほしいと思っています。
人生50年。
今はそれよりもう少し長くなってきていますが、一生物の品質を維持するならば、年数としてはそこが最低ラインかなと。



もちろんそれよりも長くいられれば尚良し。
400年も残れば、文化財指定間違いなしです(笑)




額装された蝶の絵。墨の染み込んだ和紙に白い蝶。





大切な「材料」と「使い方」。

おおざっぱに3つ、大事にしてることをあげてみます。



1、土台がしっかりしていること
2、絵具がしっかり定着していること
3、退色しづらい絵具であること




1の土台。

しっかり、というのは「動かない」こと。

湿気で波立たない、乾燥でひび割れない、反り返らない。
収縮が極力抑えられるもの、あるいは緩やかにできるもの。
素材が劣化しにくいもの。

この土台がしっかりしていないと、上に乗った絵具がどれだけ定着していても、形状を保つのが難しくなってきます。


2の定着。

絵具は「色のもと」と、それを定着する「接着剤」で出来ています。
どれだけ綺麗な色のものでも、土台にしっかり着いていないと、これまた形状を保てません。

定着は、土台に近い下地の絵具ほど強く、上塗りするほど弱めていく。
これが逆だと、上の絵具に下の絵具が引っ張られて、負けてしまいます。



3、退色しづらい絵具。

最後は、そもそも絵具が「保つ絵具」かどうかです。
紫外線に弱いものもあり、それと知らずに本画制作に使うと屋内でもすぐに退色します。

基本的に染料由来のものは退色が速いので、顔料由来の絵具が無難。
メーカーさんの説明や自分の経験をもとに、選ぶのが大切です。




和紙に描かれた繊細な花3つの絵




私は、俗に「日本画の画材」と呼ばれるものを使っています。

和紙、膠、墨、顔料由来の岩絵具や水干絵具ですね。

これらは先程の3つの考えからすれば、かなりベターな材料。


和紙と墨の保ちの良さは、長い年月で証明されています。
岩絵具と水干絵具の退色・定着の程度は、社寺修復の現場で様々なケースを見てきました。


そういうベターな材料を始めから使っていたのは、本当に幸いなことだなぁと改めて思っています。


今は、和紙ならどういう和紙が良いのか。
絵具の定着のさせ方、重ね方はどうすれば良いか。

それらを磨きながら制作をしています。





販売のラインナップに加えようとしているのは、パネル張りも額装もしていない小さな絵。
それは、なかなか「50年保つ」とは言えません。

それでも、絵具を支え、額装もしやすいような安定した土台。
しっかり定着して剥がれない絵具。
あっという間に褪せることのない色。

この3つは保ちたいと思っています。



気になることはたくさんあって、それを調べたり試したり。

水干絵具はどのぐらいで退色するのか。
マットなしの額装、アクリル板が画面に密着するとどのぐらいで不具合が出るのか。

自分がどこまでわかっていて、どこからわかっていないのか。


少しずつ試して確かめていくことが、いつかきっと大きな力になる。
そんな風に思っています。



辞典の前に飾られた花の絵









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