こちらのページでは、絵を描く材料を「絵具」「接着剤」「基底材」の3つに分けてまとめています。

絵具は「絵に色をつけるためのもの」。
すこし専門的な言い方をすると「色材」、それを定着させる「バインダー」のあわさったものです。
ここでは色材を絵具、バインダーを接着剤としてご紹介しています。




「日本画」の絵具は大きく3つに分類できます。

①岩絵具(いわえのぐ)…鉱物を砕いたもの

②水干絵具(すいひえのぐ)…土などをきめ細かくしたもの


③その他…墨や胡粉、金泥など


岩絵具も水干絵具も、昔は自然の中にある石や土、植物から作られました。
今は人工的に作るものも多く、よりたくさんの色があります。

画材屋さんでこれらを量り売りしてもらい、接着剤の膠でよく練って使います。

鉱山などから採掘される鉱石や、人工的に製造された色の固まりを砕いて作られる絵具です。
粉や粗めの砂、といった絵具。


岩絵具は同じ色が粗さごとに分けられているのが特徴の1つ。
標準的な分け方では、粗い順に5番・6番・7番・8番・9番・10番・11番・12番・白番(びゃくばん)の9段階ほど。




細かなものは小麦粉のようなきめ細かさ、粗いものは乱反射してキラキラ輝く様子が見て取れます。
色の組み合わせだけでなく、粗さの組み合わせもしながら使える。
原始的でありながらなんとも創造的な意欲をかきたてる、そんな絵具です。




水干絵具

貝殻などを砕いた白い粉に、色を染め付けて作られます。
粗さを感じる岩絵具と違って、こちらはよりきめ細やかなもの。
フレーク状になっている絵具を乳鉢などですりつぶして使います。



水干絵具は主に下塗りで使われています。
細かな絵具のため、チューブの絵具と同じような感覚で使えます。
ぼかしや滲み、線描やはっきりした形の塗りきりなど、岩絵具よりも自由度の高い絵具でもあり、
岩絵具の発色を助けるものでもあります。



◆接着剤

絵具を基底材に接着させるもの、バインダーです。
油絵なら「油」、卵で描く卵テンペラ。
チューブのアクリル絵具はアクリル樹脂が接着剤として使われています。

「日本画」の主なバインダーは膠(にかわ)。
動物の皮や骨から作ったもので、絵画以外にも広く使われてきました。

膠もたくさんの種類があり、とても面白い材料です。




膠は水に溶かして使用します。
その水の量で接着力が変わります。
強い接着が必要な時は少ない水で、弱くしたい時は多い水で。



膠を入れた水を温めると、膠は溶けていきます。
その液体で絵具を練って塗ることで、粉や砂だった絵具が画面に定着します。







◆基底材(きていざい)

基底材は「絵具を塗る土台」、キャンバスや紙のことです。
「支持体」とも呼ばれます。
絵具に比べると注目されないものですが、絵を支える大切なもの。
どんな絵を描くのか、「それを決めるのは基底材から」と言ってもおおげさではありません。

「日本画」というと今は和紙に描くイメージを持たれる方が多いと思います。
代表的なものはこの3つ。

①和紙…繊細で丈夫な素材。幅広い表現が可能。

②布…綿や絹など。溶けるようなぼかしができ、昔のメイン基底材。


③板…木目を活かすなど存在感たっぷり。絵馬や板絵など。



私の作品の多くは和紙に描いています。
和紙のしなやかさ、紙肌の美しさを活かすような作品作りをしていければと思います。



















これらの材料は古くから人類が作りあげてきたものです。

日本では「日本画」という呼び名で親しまれてきていますが、
絵具を膠で定着させて描く方法は世界各地にあるもの。

身近な自然から美しい色を取り出して描くこと。
その率直な想いを感じさせてくれる力が、これらの材料にあると感じています。



社寺修復の仕事に勤めていた経験から、少しマニアックな知識も持ち合わせております。
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