【終了のお知らせと御礼】
下記の通り開催しておりました絵画展「みずのあとさき」、
本日つつがなく終了することができました。
お立ち寄りいただきました皆様、
お忙しい中で足を運んでくださった皆様、
ずっと気にかけてくださった皆様、
本当にありがとうございます。
初めての個展ということで、
勝手がわからないながらも1年間、
何を描くか・どう描くか・どう見て頂くかを考えてきました。
そうして開いた場所で、かけがえのない出会いをいただけたのは
会場に1歩足を踏み入れて下さったからこそだと感じています。
作品を前にお話しできたことの1つ1つ、
共鳴してくださった表情の1つ1つが忘れられません。
これから先、私が果たしていく約束事のように感じています。
これ以上ないほどの経験と結果をいただけました。
どんな言葉なら今のこの想いを託せるのか。
たくさん言葉を探しましたが
今はこの一言に込めさせていただきます。
本当にありがとうございました。
2024.12.2 高井みいる
髙井みいる 絵画展 みずのあとさき
- 会期:2024年11月27日(水) – 12月02日(月)
- 時間:11:00 – 19:00 ※最終日は18:00
- 会場:アートギャラリー北野1階(京都市三条河原町)
以下、出品目録と、紹介文つきの作品画像をご覧いただけます。
一部ではありますがどうぞゆったりとご覧ください。
「みずのあとさき」
水の後・先。見ずの後・先。
川の流れを思うとき、
行ってしまった過去、これから出会う未来、
そしてそれを感じながら綿々と続く今をそこに重ねています。
また、石の佇まいを見つめるとき、
星のまたたきのような遠く永い時間を思います。
葉の燦燦としたきらめき、月や星のさやけさ。
想いながらもはっきりとは見えない、これまでとこれから。
そんなあてどもないものに想いを馳せた作品です。
どこか不思議でほのかに明るい、静かな景色たちをお楽しみください.髙井みいる
出品作品
153750e81e246856648f3c500c77af5b作品紹介
『星おくり』
2017年の作を今回のアイキャッチに加筆。
兵庫の山間に出張していた時、とても綺麗な星空を見ました。
それは幼いころ見た田舎の空も思わせるものでした。
植物に星の瞬きを感じることがあります。
ふと心に浮かんだのは、植物が水面を介して空に上がる光景。
鬱蒼とした木々の中の青い泉に沈み、星となって空に送られていく。
そんな他愛もない心象の一風景です。
『水のあとさき』
青い川の流れを描いた作品。
緑がかった青、青みがかった緑。
魂魄の色はそんな「碧」と「翠」だと古の人は信じ、
魂が体から離れないよう、手首や足首にその色の石を身に付けたそうです。
その話を頭の片隅に浮かべながら
勢いよく流れ、また静かに凪いでいく水を描きました。
色味の鮮やかさを出しながらも、
紙肌と軽やかさが感じられるようにしています。
『行き交う日』
水の流れのなかにある、石のまたたきを描いた作品。
10年ほど前から川原の石に惹かれています。
流れ去る水に対し、
静かにたたずむ石。
その2つが川の中で行き交うとき。
なにか光の交感のようなものが見えればと、
筆をとりました。
雲肌麻紙の美しさを残しつつ、
墨の色で水の透明感が出せたように感じています。
『石の眠りは昏くして』
タイトルは、西條八十『石』の一節より。
浅い水の中でたたずむ石。
石に感じるほのかな明るさと暗さは
星や水の気配によく似ています。
どこまでも届くような強さを持ちながら
やわらかにはりつめる静かな光。
澄んだ水と、何物でもない石たちの
青く静かな詩情に心を寄せた作品です。
『やまず流れる』
川の流れに「時間」を託したシリーズ。
今回は5点描き下ろしました。
この作品はぜひ原画をご覧になっていただきたいもの。
墨で下ごしらえした和紙の肌合いと、
白の絵具の重なりに独特の味わいがあります。
また流れの描線は、岩絵具をするどくぼかしとっており
間近でご覧になるとそのエッジの鋭さも楽しんでいただけます。
やまず流れると題したそのとおり、
何枚描いても止むことのない川への詩情を感じ
さらわれるような心持ちになる。
そんな特別な作品たちです。
『葉の光る』
水と葉、光をイメージした小さな作品たちです。
星のまたたきのようで、水よりも色づき、石よりもさんざめく。
そんな光をうけた植物を絵にしました。
高知麻紙の紙肌を活かしながら
空のようにも雪のようにも感じられる白と水色を重ねています。
深く鮮やかな緑とのコントラストで、光を感じるシリーズになったと思っています。
向かって左より『石の夢』・『石の鏡』
石に感じる時の流れや、またたくような静けさを形にできないか、と描いた作品です。
以前より「石の見る夢」という言葉が頭にあります。
また、なにかはらはらと硬質な光の粒が舞うような、通り過ぎていくような。
言語化がとても難しく、つかみどころのない中で描いてみました。
「画中画」や「切り抜いたような絵」という、これもおぼろげな何かと、今後うまく組み合うような気がしています。
『島の眠り』
月夜の入り江を描いた作品です。
今回、ほかの作品にもちらほらと見られる「カーテンのようなもの」。
現実にはない水の景色をのぞく「とばり」のようなイメージです。
この作品は、広く深い湖の島々が
月明かりのなか眠る景色を思い浮かべて描きました。
月夜は寓話のような詩情と、ここではないどこか。
そんな遠さを感じさせてくれます。
『おきの石』
石というと思い浮かべるのは『ヘンデルとグレーテル』に出てくる変哲もない白い石。
この作品ではすこし写実的に描き、背景・空間に水の気配を漂わせました。
タイトル「おきの石」は『小倉百人一首』の和歌にもみられる枕詞より。
小さな頃、あの歌を覚えた時から、水に人知れず潜む石のイメージに惹かれています。
素朴ながらも、岩絵具と墨の重なりで味わいある作品にできました。
「一」「二」「三」の3つの数字、とくに「三」を軸にした展示ができないかと思っており、
それに先行して描いたものでもあります。
高井みいる絵画展「みずのあとさき」、
最後までご覧いただきましてありがとうございます。
言葉が浮かんで、そこから描き進めることが多くあります。
言葉をみちしるべのようにして探っていくこともあります。
そんな風に私の絵画と言葉はつながりの深いものですが
一方で、絵画の魅力は言葉にできないものを現すことにあると感じています。
「なにかわからないけれど心の底に触れる」
自分がそう感じられる絵をこれまで描いてきました。
そう感じていただけるようなものを、この先も描いていこうと思っています。
新しい作品たちを訪ねるように、
これまでとこれからを、水の流れに重ねながら。
出品しました作品の、制作経過などはこちらよりご覧いただけます