【終了のお知らせと御礼】

京都にて開催しておりました絵画展「夜のひとひら」、
昨日つつがなく終了することができました。

お立ち寄りいただきました皆様、
お忙しい中で足を運んでくださった皆様、
ずっと気にかけてくださった皆様、
本当にありがとうございます。


3回目の個展となります本展は、2年前の初個展の会場へ戻ってきました。
アートギャラリー北野さまの本年での閉廊に伴い、こちらでの展示は今回が最終となります。

そうした中で、これまでの方とも、はじめましての方とも、
いっそう深くつながりをいただける6日間を頂戴できましたこと、
心から嬉しく感じております。
お世話になりましたギャラリーさまへも、
何か胸を張って御礼が言える、そんな充実した展示となりました。


「夜のひとひら」の制作では、ずいぶんと自身の内面に潜ったように思います。
そんな中で生まれた作品たちは、どんな風に映るのか。
展示してみるまでわからない部分が多々ありました。

描いた白い紙は、生きてきた時間のひとひらでもあります。
これまで以上に、言葉にしがたいものがありました。
そうした作品に取り組んだこと、ご覧頂いたこと。
これからの画業にとってなくてはならないものだったと、強く深く感じています。


いつも温かく見守ってくださっていること
会場に一歩足を踏み入れてくださったこと
作品との対話の中に、私も招いて下さったこと。

得難く、かけがえなく、忘れられない時間を頂きました。

また新しい景色の前でお会いできますのを楽しみに、
これからも、心の底に触れる作品を描いて参ります。


この度も本当にありがとうございました。


2026.4.28 高井みいる



2026.4.28
【作品紹介追加のお知らせ】

終了しました絵画展「夜のひとひら」、
頂戴しました経験と結果の御礼としまして追加で作品をUPしています。
あらためてお楽しみ頂けますと幸いです。








髙井みいる 絵画展 夜のひとひら








「夜のひとひら」

「ヨル」には「ヒルではない状態」、「停止した状態」という意味があるそうです。
身動きできないまま、過ぎるのを待つ時間。
そこに、淵のような暗がりを重ねていました。


そんな夜を描こうとした時、
ふっと浮かんできたのは、白い紙の舞う景色でした。

薄く、軽く、ただよう紙。
暗がりに浮かび、光に溶ける白い紙。

その紙は、時の中をゆく私たちの姿なのかもしれません。

生きていれば、誰にでも訪れる夜。
流れる時間の中で、別の世界のように留まるもの。

見えそうで見えないそんな景色を
両手で受け止めるように描いた作品たちです。

ほのかな光に浮かぶ夜の景色。
その中に佇むように、どうぞゆったりとお楽しみください。

髙井みいる


出品作品

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作品紹介


『月と鳥』

深い夜の中の紙。
ゆっくりと動きながら、暗がりを切り取るような白さ。

その紙を横切ろうとする鳥と、紙が落とす影に浮かぶ月。はらはらと降る、雨や雪や星のような小さな光。

「夜のひとひら」はこの作品から始まりました。
深く、静かな動きの底に「夜」が詰まった一作です。


『home』

月や鳥のほか、紙が織り成す景色には「家」も浮かび上がってきました。

そういえば「夜」を過ごすのは、いつも家の中。
そんなことに思い至ります。

紙の上に浮かぶ家のシルエット。
そこに重なる月と、窓の灯り。
ほのかな光に、あの頃の居場所が照らし出されています。


『花の影』

絵具を、乾いた筆で和紙にすりつけながら、少しずつ夜を形作っていきます。
その途中で見えてくる、光と影。
幻影のような形を追いかけていくと、おぼろげな花が浮かんできました。
夜の中、瞼の裏。
暗がりに浮かぶ夢のような花の影の間を、白い紙が通り過ぎていきます。


『青い夢』 

夜は暗くて漠としたもの。
その中に浮かぶ景色を見ようとした時、これまでとは違った方法で描くようになりました。

詳細な下図を作らずに、絵具を乗せていく中で浮かんできたものを描き起こしていく。

絵具が乗る前の和紙の色は、色が重ねられていく中で、光のような白となって残ります。
その光に照らされるように、蝶や家や葉が浮かんで。

そうして出来上がった景色は、水の中を覗き込むような青い夢。
本展の中でも、特に幻想的な一作です。


『月影』

学生の頃、自宅の前で夜をスケッチしていました。
黒い紙にパステルで、月がつくる虹彩や、照らされた雲の色。

窓のカーテン越しに外は明るく、完全に真っ暗にならない部屋の中で過ごす夜。
そのあたたかで、つかみようのない色を思い起こすと、月の影と重なります。
暗さの中の、透明感、深み。
それが描けた作品だと感じています。


『光』

石のような確かさを持たない紙に、親しみを覚えました。
人は、薄くひらひらと舞う紙のようなものかもしれないと思ったからです。

そんな紙にとっての石は、憧れのような、留めてくれるもののような、そんな存在かもしれません。
紙と石の邂逅を、1つの光が照らしています。


『あさかげ』

夜に舞う紙を見た時、きっと朝の光には溶けていく、そんな白だろうと思いました。

朝がやってくる時間帯は、一刻一刻と色が移り変わります。
紫、桃、橙、黄、緑、青。
それらが全部あわさって白く澄んだ光になる中、
紙もゆっくりと朝の景色になっていきます。


『緑影』

夜に降りていく紙の景色を描きました。
青い水底へ入っていく時、紙はその輪郭をはっきりとさせていきます。

タイトルは、“緑樹影沈んで 魚木に登る気色あり”(謡曲『竹生島』)より。
この一節の影響か、葉のような魚がちらほらと泳いでいます。

『夜半の月』

“心にも あらでうき世に ながらへば
恋しかるべき 夜半の月かな”

平安時代に詠まれたこの歌に、いつの世も変わらない人の心の動き・なつかしみを感じます。

画中の月は、左上に小さく。
あの時に見た月、あの頃過ごした夜は、振り返ればほのかに明るく。
今この時の光にも溶け込んでいるのだと思います。

『羽休め』

“紙”を題材にした時に、折り紙にも心惹かれました。

本作は、落水麻紙・薄美濃紙・楮紙といった、3種の和紙を張り合わせたものに描きました。

ユニークな和紙の質感と、穏やかな色調に、ゆったりひと息つくような時間が描けたのではないかと思います。
本展でも特にお話の弾んだ作品で、タイトル通り、良い小休止を与えてくれた一作です。

『鳥と舞う(左)、花に舞う(右)』

鳥の影、花の影。
そんな、色のついた影を描きたい想いがずっとあります。
時折出てくる「蝶」「鳥」「花」という題材は、人の心に触れる何かがあるように感じています。

むかし書いた詩の一節に、こうしたものがありました。


さみしさを数え合わせてなんになる
鳥にも花にもなれなくて
風の音だけ抱いている




そんな憧れや懐かしさや遠い原風景のひとひらを、描いた2枚の作品です。

高井みいる絵画展「夜のひとひら」、
最後までご覧いただきましてありがとうございます。


これまで、水の流れに「時間」を重ねて描いてきました。
ただただ流れていくその中にも、描き留めたい「今」がある。
そのことに強く惹きつけられます。

対して「夜」は、留まる時間でした。
動けない時間、澱むような時間。

その夜の底で、目をとじたり開いたりしながら、
またやってくる朝を待つだけの頃がありました。


そんな「夜」をどうやって「作品」にできるのか。


宛てもないまま描き始めた時に、浮かんできた紙。
それを見て、私が描く夜は「居場所」なのだろうと、
そう、わかったような気がしています。

誰しもに訪れる夜。
留まる時間の底にもある居場所。
それを受け止めながら、探しながら、描いた数か月でした。


めまぐるしい時代の中でも、そんな居場所がほのかな光になることを
多くの方は知っていると感じています。
あの夜の中にも、これから先の夜の中にも、
そんな居場所があることを心に留めて。
これから先も「今」を描いていきたいと思っています。