
暖かくなってくると嬉しいことの1つに、スケッチしやすくなる、というのがあります。
眩しい日差しはやや難ですが、指先までくっきり動くことが何よりもありがたい。
作品の準備段階、資料集めの方法にスケッチがあります。
描きたい対象を実際に見て、手元に写し取っていく。
それは対象を訪れて親交を深めるような、あるいは採取するような、そんな時間です。
今日は近所に椿が落ちていたのを幸いに
アトリエでその落椿を描いてみました。
臙脂よりやや明るいその赤い花弁は、
触れれば色が鱗粉のように着きそうな
色の白い女性の頬や唇を彩るに映えるかのような、そんな美しさです。
花芯の根本を淡く染めたような赤。
てっきり花弁の赤が反射しているのかと思って、
ついついそこにときめきながら描きましたが
最後、その椿を分解すると花芯の根本はもともとうす赤いのでした。
なんとなく知っているようで知らなかったこと。
近づいてみると違った一面が見られること。
あなたはどんな人ですか、と訪れるような、そんな時間は
自然とこちらの物腰を落ち着かせ、眼差しをやわらかくしてくれます。


